チタン熱処理
熱処理によりチタンが着色してしまう理由
チタンの耐食性が高い理由は、ステンレス鋼やアルミなどと同じで、材料の表面に非常に薄い酸化皮膜が形成されているためです。
この酸化皮膜は、常温では比較的安定していますが、熱処理など高温になる条件下では層が厚く成長しやすく、
熱処理後の「変色」「着色」の不具合となることがあります。
特にチタンは酸化に対して非常に敏感で、例え真空炉で(減圧下で)熱処理を行っても製品そのものや炉壁、
ヒーターなどに付着したわずかな酸素や水蒸気などと反応してしまいます。
当社では、1×10^ー5Pa以上の超高真空雰囲気下で、着色を抑制した熱処理が可能です。
なお、この酸化皮膜の厚さをコントロールすることで干渉色の現れ方を変え、チタンを様々な色合いにする陽極酸化処理などの技術もあり、一概に着色が不具合になるというものではございませんので、ご注意下さい。
チタンの熱処理条件 (64チタンの時効処理や応力除去焼鈍など代表的なチタンの熱処理条件です。)
材質 | 応力除去焼鈍 | 焼鈍 | 溶体化処理 | 時効処理 | |
純チタン | JIS1~4種 | 400~600℃ | 650~815℃ | - | - |
α-β合金 | Ti-6Al-4V | 480~650℃ | 700~870℃ | 900~970℃ | 480~690℃ |
β合金 | Ti-13V-11Cr-3Al | 480~540℃ | 760~815℃ | 760~815℃ | 440~530℃ |
チタン・チタン合金の特徴
チタン及びチタン合金は、比較的新しく実用化された非鉄金属で、実用金属の中でも特に優れた比強度の高さを持ちます。
(※比強度とは密度あたりの引張強さのことです。比強度が高い=軽さの割りに強い)
また、耐食性や人体への適合性にも優れており、航空機部品や医療、スポーツなどの分野でも多く使われます。
チタンの結晶構造
純チタンの結晶構造は、常温で稠密立方構造をしていますが、一定の温度(885℃前後)を超えると体心立方構造に変化します。
稠密立方構造の時はα相、体心立方構造の時はβ相になっていますが、合金元素を添加する事により、
常温でβ相またはα相とβ相が混在した状態で安定化させることができます。