オーステナイト系SUSの低温焼鈍(ばね焼鈍)

寒さがまだ残る2月ですが、少しずつ春の兆しも見えてきました。寒暖差が大きい時期ですので、体調管理にはいつも以上に注意したいものです。

今回は、「オーステナイト系SUSの低温焼鈍(ばね焼鈍)」についてご紹介いたします

オーステナイト系SUSと加工誘起マルテンサイト

本来、オーステナイト系SUS(SUS304など)は常温で非磁性ですが、塑性加工や曲げ加工などで大きな力を加えると、一部がマルテンサイト化します。これは「加工誘起マルテンサイト(α’)」と呼ばれ、このマルテンサイトは磁性を持っています。

この加工誘起マルテンサイトと加工硬化の効果を組み合わせることで、材料にばね性(応力に対する弾性復元力)を付与することが可能です。ただし、マルテンサイト化が過剰になると脆性が増すため、ばね特性が逆に劣化することもあります。

ばね性と脱磁の関係

熱処理による脱磁を行う場合、ばね性と完全脱磁は相反する特性です。

・ばね性を維持するには、加工誘起マルテンサイトや応力が残っている必要があります。

・逆に完全に脱磁すると、材料が軟化しばね性は失われます。

具体例

■ 低温ばね焼鈍時の磁性低減

磁性は最大で約1/2程度まで低減可能です。

加工誘起マルテンサイトは残存するため、ばね性は一定以上維持されます。

■ ばね焼鈍後に強磁場へ曝露した場合

残存している強磁性相により、再度強い磁場にさらされると再着磁する可能性があります。この場合、磁性は元の最大値まで回復することもあります。

■ 600℃以上に加熱した場合

600℃以上に加熱すると、強磁性相の絶対量が減少するため、再着磁しても磁性は元の最大値まで回復しません。

ただし、この温度域では炭化物析出による鋭敏化リスクや、弾性限界の低下によるばね性の低下リスクがあります。条件によっては影響が軽微な場合もあります。

■ 1000℃以上(溶体化処理)の場合

1000℃以上に加熱すると、強磁性相はほぼ消失し、実用上ほとんど再着磁は起こりません。しかし、材料は完全に軟化し、ばね性は失われます。

材料特性や熱処理の効果は一つの条件だけで決まるものではありません。実際の現場では、多様な経験や知識を組み合わせて、最適な条件を導き出すことが大切です。

弊社では、これまでの豊富な経験とノウハウを活かし、お客様の用途や条件に応じた最適な提案を行うことが可能です。本記事がその参考となり、より安全で効率的な材料利用や加工条件の検討にお役立ていただければ幸いです。

 

多様な商流を背景に、最適解を届ける 株式会社メタルヒート